「教会だより」の巻頭言 9月号

唐津城から望む風景

 被造物の声を聞け

カトリック唐津教会 主任司祭 江夏國彦

失うまで、なかなかその有り難さに気が付かないのが私たちの現実です。このことは、今、地球規模で起きている生態系の異変による異常気象や自然災害においても同じです。

全ての被造物は神が与えてくださったものです。その母なる大地は、悲痛な叫びをあげています。その叫びに耳を傾ける時です。

日本のカトリック教会では9月1日から10月4日までを「全ての命を守るための月間」として2020年から取り組んでいます。ですから9月は「エコロジカルな回心」を深める月にしましょう。この回心のために、現在の世界状況を地球規模で考えること。

世界の政治情勢を専制主義と自由主義の対立で考えることが多いですが、自然環境問題は、消費主義に対して調和と共存主義と言えるではないでしょうか。無意識のうちに消費主義的生活様式で生きていると、自然環境に対して専制君主的な人間中心の考えで多くのものを消費してしまい、そのため過剰生産による自然破壊を招くのです。消費主義のままの生活を続けていたら、恐ろしい結果を招くでしょう。その責任はだれにあるのでしょうか。

多くの人が責任を感じておられることでしょう。身近なことから環境保全と回復のために何が出来るかを考えましょう。そして、地球規模の問題ですから多くの人々と協力して取り組むことが必要です。とくに、経済的、地域的に不利な立場にある人々のことを優先して考え、最も弱い立場にある人、犠牲になっている人々を中心に対策を立てることだと思います。

私たちの生きている地球の美しさ、豊かで多様性に満ちた世界を回復させましょう。アシジの聖フランシスコが自然を賛美した、あの美しさを取り戻すために。

「私の主よ、あなたは称えられますように、すべてのあなたの造られたものと共に、わけても兄弟太陽と共に。・・・太陽は美しく、偉大な光彩を放って輝き、いと高いお方よ、あなたの似姿を宿しています。

私の主よ、あなたは称えられますように、姉妹である月と星のために。あなたは月と星を天に明るく、貴く、美しく造られました。・・・」(「太陽の賛歌」より抜粋)

秋を迎えて、私たちの日々の祈りが大きな心で、地球という大聖堂の中で、多くの命を育む素晴らしい地球を与えてくださった神に向かって、感謝の賛歌を捧げたいと願うからです。

そのためには、崩壊の危機にあるこの美しい大聖堂の保全と修復が必要なのです。中世時代、教会が腐敗と分裂の危機にあったとき、聖フランシスコは「私の教会を修復せよ」という主キリストの声を聞いて回心と償いの生活を始めたのでした。